Vol.12

私は幼い頃から絵本が好きでした。その原点は、幼稚園で毎月届く『こどものとも』や『かがくのとも』だったように思います。
そんな私にとって、昨日の絵本作家・林明子さんの訃報は、とても寂しい知らせでした。
林さんの作品の中でも、私が特に思い出深いのは『こんとあき』です。
今年のゴールデンウィーク、上野の森親子ブックフェスタを訪れた際、福音館書店のブースで「こん」のぬいぐるみを見つけました。
思わず写真を撮ったのですが、その時は、ただ懐かしい気持ちになっただけでした。
まさか、その2か月後に林明子さんの訃報に接することになるとは思ってもいませんでした。
『こんとあき』には、私にとって忘れられない思い出があります。
以前、雑誌『母の友』に「こん」のぬいぐるみの型紙が付録として付いていたことがありました。
裁縫が得意だった母にお願いして、息子のために作ってもらったのが、この「こん」です。

その「こん」は、今はおいの家で大切にされています。
一冊の絵本から生まれたぬいぐるみが、時を経て、今も誰かのそばにいる。
そんなことを思うと、不思議と温かい気持ちになります。
大人になってから絵本を開くと、物語だけではなく、その本を読んでいた頃の景色や、その時々の出来事まで一緒によみがえってくることがあります。
私にとって『こんとあき』は、今でも心に残る一冊です。
林明子さんの作品は、これからもたくさんの子どもたちに読まれ、そして大人になってからも、それぞれの思い出とともに、心によみがえるのでしょう。
今回の訃報に接し、一冊の絵本が長い年月をかけて人の心に寄り添い続けることのすばらしさを、あらためて感じました。
校長 荒籾 和成